確定申告は毎年2月16日から3月15日の間に申告しなければなりません(その年の曜日によって申告期限がずれることがあります)。副業を始めて最初に申告するときに悩むことがあります。事業所得で申告した方が良いのか、それとも雑所得で申告した方が良いのかということです。
サラリーマンの時は年末調整だけで終わってしまうので、副業を始めたばかりの時は確定申告についてほとんどわからないでしょう。そこで今回は確定申告の所得について話をしていきます。副業の場合、事業所得と雑所得のどちらで申告すれば良いかを税務署に直接聞いてみました。その内容についても詳しくお伝えします。
目次
事業所得と雑所得の違い
所得税の所得
個人の人は確定申告で年間の所得から所得税を計算し、申告・納税します(年末調整も確定申告と同じ方法で計算しています)。所得税には10の所得があり、それぞれ計算方法が異なります。サラリーマンが会社からもらう給料は10の所得の中の給与所得になります。
副業を始めた方の所得は業務内容にもよりますが、大半の方が事業所得か雑所得になります。事業所得と雑所得とは何が違うのでしょうか。
事業所得
国税庁によると『事業所得とは農業、漁業、製造業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。』とあります。せどりを行っていれば小売業からの所得で、情報発信で所得を得ていればサービス業から生ずる所得になります。
国税庁のホームページに事業としての意義について明記されており、『「事業として」とは、対価を得て行われる資産の譲渡等を繰り返し、継続、かつ、独立して行うことをいいます。』となっています。
繰り返し、継続して行われると事業になります。不要になった物をたまにメルカリ等で売ることは事業には該当しません。
雑所得
雑所得がどのような所得か国税庁のホームページで確認してみましょう。所得税には10の所得があるという話をしましたが、他の9つのどの所得にも当たらない所得が雑所得です。具体的には公的年金や作家以外の人が受ける原稿料や印税などが雑所得になります。
副業の大半は所得税の中の事業所得に該当するので、内容が事業所得に当てはまらない場合は、雑所得で申告することになります。
計算方法
所得税の申告をするに当たり事業所得と雑所得とでは違いがあるのでしょうか? 違いがなければどちらの所得にするかを悩む必要がありません。
所得の計算方法は事業所得も雑所得も総収入金額-必要経費で同じです。両者に違いはありません。
事業所得と雑所得はどこが違う
事業所得と雑所得では計算方法に違いがありませんでしたが、どこが違うのでしょうか? 実は計算方法以外のところで事業所得にメリットがいくつかありました。
損益通算
所得税計算の際に事業所得は損益通算をすることができますが、雑所得は損益通算することができません。所得税の計算方法を簡単に要約すると、10の所得ごとに所得の金額を計算し、各所得の金額を合算してから税率を乗じて税額を算出します。
10の所得金額を合算する際にルールがあります。給与所得と事業所得がある場合、事業所得がマイナスの際には給与所得のプラスから差し引くことができます。一方、給与所得と雑所得の場合は、雑所得がマイナスだったとしても給与所得から差し引くことはできません。
簡単な例で確認してみましょう。給与所得の所得金額が100、事業所得の所得金額が-50だったとすると、損益通算をして総所得金額は50になります。次に給与所得の所得金額が100、雑所得の所得金額が-50だったとすると、損益通算はできず雑所得のマイナスの所得は切り捨てとなり、総所得金額は100のままです。
所得金額が高いと税額も高くなるので、副業の所得がマイナスの場合は雑所得より事業所得の方がメリットがあります。
青色申告
事業所得では青色申告の承認申請を行なうといくつかメリットがあります。
- 青色申告特別控除が受けられる・・・①
- 損失額の繰り越しができる・・・②
- 家族への給与を経費にできる・・・③
①青色申告特別控除とは所得計算を行なう際の控除のことです。総収入金額-必要経費-青色申告特別控除で所得金額を算出できます。控除金額は要件によって65万円の控除と10万円の控除があります。
②損益通算をしても控除できない金額が残ってしまった場合、最大で3年間繰り越すことができます。給与所得の所得金額が100、事業所得の所得金額が-150だった場合、その年は給与所得から100しか差し引くことができないので、残りの50は翌年の給与所得から引くことができます。
③家族を従業員として雇って給与を支払った場合、専従者給与として経費計上することができます。白色申告でも経費計上することはできますが、要件や金額が青色申告とは異なります。
税務署に確認しました
事業所得と雑所得を比べると事業所得の方がいろいろなメリットを受けられそうです。ただ、事業所得と雑所得の間には明確な区分がありません。そこで税務署に直接聞いてみました。
確定申告電話相談センター
毎年、お正月が明けてから確定申告の申告期間が終わるまで、税務署では「確定申告電話相談センター」を設置してくれています。自分の住所地がある所轄の税務署(どこの税務署でも問題ありません。)に電話をして、音声案内に従って番号を押すと「確定申告電話相談センター」につながります。
税務署の回答は?
「副業を始めたのですが、事業所得と雑所得のどちらで申告すればいいですか?」と聞いてみました。「あなたの場合はこの所得です。」といったバチッとした回答はもらえませんでした。継続して行っているか、収益を上げる可能性があるか、毎日時間を割いて行っているか、人的・物的な設備が整っているか等を総合的に見て判断するとのことでした。
電話相談の注意点
税務署の電話相談へは2度連絡しました。初めに対応してくれた方は「開業届を出していれば事業所得」と言っていましたが、不安を感じて再度電話して、違う方に確認しました。
確定申告の時期になると税務署は大忙しなので、確定申告電話相談センターでは税理士の方に応援を頼んでいます。税理士によって勉強している方、勉強していない方と様々なので、言われたことをそのまま信じることは危険です。少しおかしいと思ったら何人かの担当者に確認するようにしましょう。
事業所得で申告するために
副業に対するビジョン
副業を始めたのはお小遣い稼ぎのためで、稼いだ小遣いで美味しいものが食べられればいいと思っている方は雑所得で申告しましょう。
まだ副業を始めたばかりで稼げていないけれど、いずれ副業をメインとしてやっていく気持ちがあり日々活動されているのであれば、事業所得を選択しましょう。
事業所得の準備
事業所得で申告するためにはいろいろと準備が必要になります。また、事業所得で申告した後で税務署からの確認連絡が来る可能性もあるので、事業所得であることを証明するための準備を万端にしておく必要があります。
開業届と青色申告承認申請書
開業届と青色申告承認申請書は必ず提出しましょう。この2つの書類を出したら事業所得が確約されるわけではありませんが、事業として行っていくことを宣誓することになります。
開業届はいつ提出しても問題ありませんが、青色申告承認申請書は提出時期が決まっています。青色申告をしようとする年の3月15日までです。2020年を青色申告で申告する場合は、2020年3月15日までに申請書を提出しなければなりません。
その年の1月16日以降に副業を始めた際は、事業開始の日から2か月以内の提出が必要です。もし4月1日に副業を始めて青色申告をしたいのであれば、5月31日までに申請書を提出しましょう。
複式簿記で帳簿をつける
青色申告で行なう場合は、必然的に帳簿をつけることになりますが、帳簿をつけることによって趣味で行なっているのではなく、事業として副業を行なっていることの証拠になります。趣味でやっていたら帳簿はつけませんよね。帳簿は自分でつけてもいいですし、税理士や会計事務所に頼んでも問題ありません。
車両日報をつける
車を使って副業(せどりの仕入れ等)を行なっているのであれば、車両日報をつけましょう(今後会計処理のブログも書いていく予定なので、詳細はそちらに記載します)。車両日報をつけることでいつどこへ行って副業を行なっていたかの証拠になります。
電車やバスで移動した場合は、移動に使った公共機関名や駅名等を記載しておきましょう。
因みに私は、2019年度の申告(2020年3月15日までが申告期限)は雑所得で申告します(複式簿記で帳簿をつけていなかったので)。そして申告と同時に青色申告承認申請書を提出し、2020年度の申告(2021年3月15日までが申告期限)から複式簿記で帳簿をつけ、事業所得で申告していきます。
今後、複式簿記の帳簿の付け方に関するブログも書いていきます。
まとめ
副業を始めて最初に確定申告する際には、副業の所得を事業所得にするか雑所得にするか悩むところです。事業所得と雑所得の違いを確認すると事業所得の方に多くのメリットがあることがわかります。
副業が事業所得に該当するかどうかは、毎日時間を割いて継続して行っていて、収益を上げられる可能性があり、設備が整っている等の様々な観点から総合的に判断されます。
今後副業に力を注いで、メイン業務としてやっていく気持ちがあれば、準備をして事業所得で申告していきましょう。