副業を始めた人にとって悩みの1つは、確定申告をどうするかということではないでしょうか。税理士にお願いするのも1つの方法です。確定申告を税理士に依頼せず、自分でやると決めた場合は確定申告の前にまとめて行なうのではなく、常日頃から会計処理を行なうことをお勧めします。
今回は、自分で会計処理を行なうと多くのメリットがあることや会計処理は難しくないということについてお話ししていきます(私は20年以上経理の仕事に携わっており、実際に下記の方法で自分の副業の会計処理を行なっています)。
目次
会計処理を自分で行なう長所と短所
会計のことはまったくわからないし、難しそうだから自分ではやらないという思いが強い方は無理に自分で行なうことはありません。税理士にまかせてしまいましょう。ただ、自分でやってみるといろいろなメリットがあります。会計のことを知っていて損はありません。
会計処理を自分で行なうメリット
毎月の副業の経営状態がわかる
会計ソフトに副業の売上や仕入、関連するサービスへの支払、物品の購入を入力していくと月単位で試算表(貸借対照表・損益計算書)を確認することができます。試算表を見ることによって経営状態がわかります。
売上は上がっているが利益は増えていないとか、この経費を使いすぎているとか、昨年に比べると経営状態が悪くなっているとか、さまざまなことがわかります。経営状態がわかれば、対策を行なうことができます。
大企業も中小企業もベンチャー企業もこのことを行なっています。経理部門が作成した試算表をもとに経営幹部が毎月打合せを行ない、今後の方針を決めて行動しています。
経営状態が悪くなれば、どこに原因があるのかを見つけ出し、修正できない原因であれば(環境が悪くなっている等)、方向転換するのも選択肢の1つです。副業もまったく同じです。
費用がかからない
自分で会計処理を行ない、税理士に頼まなければ費用はかかりません。会計ソフトには有料のソフトと無料のソフトがありますが、無料のソフトでも問題なく会計処理から決算まで行なえます。私は無料のソフトを使用しています。
会計処理を自分で行なうデメリット
手間がかかる
会計処理を一度もやったことのない人にとってはどうしたら良いかわからないし、手間がかかって副業が予定通り行えなくなると多くの方が思われるでしょう。会計処理の作業のために副業がおろそかになるようであれば、税理士に頼みましょう。
ただ、会計のことがわかってくれば、副業の会計処理にはそれほど手間はかかりません。
会計処理は難しくない
会計処理を難しいと感じる理由は、“簿記”、“仕訳”、“勘定科目”、“借方・貸方”、“貸借対照表”、“損益計算書”等々聞いたことのない用語がいっぱい出てくるからではないでしょうか。今回はこれらの用語を簡単に説明していきます。
簿記
簿記とはお金やものが出たり入ったりするのを記録する方法のことです。商品を仕入れてお金を払ったことや商品が売れてお金が振り込まれたこと等を記録していく方法を簿記と呼びます。
仕訳
仕訳とは取引(お金やものが出たり入ったりすること)を帳簿に実際に記録していくことです。商品を仕入れたり、売れたことを最近では会計ソフトを使って記録していきます。
勘定科目
取引をわかりやすく分類するために使われます。例えば商品を仕入れた場合は「仕入」という勘定科目を商品が売れた場合は「売上」という勘定科目を使います。商品が売れたけどすぐに入金にならない場合は「売掛金」という勘定科目になります。
どの取引がどの勘定科目になるのかは概ね決まっているので、仕訳を続けていけば覚えます。
借方・貸方
取引を仕訳する際に勘定科目を左側と右側に記入(入力)します。左側を“借方”と呼び、右側を“貸方”と呼びます。勘定科目によって“借方”に記入(入力)すると増加する科目、減少する科目があり、“貸方”に記入(入力)すると増加する科目、減少する科目があります。
“借方”“貸方”のどちらかに記入(入力)することによってどの勘定科目が増加(減少)するのかを覚えてしまえば仕訳することができます(別の記事で詳しく説明していきます)。
貸借対照表
ある時期における財政状態が表示されます。仕訳を行なった結果が貸借対照表になります。“貸借”とは“貸方”“借方”のことです。
貸借対照表を見れば、資産(現預金や土地建物や売れたけど入金になっていないもの等)、負債(借入金や仕入たけどまだ支払っていないもの等)、資本(資本金や今まで稼いできた利益)がどれだけあるかがわかります。
損益計算書
ある期間の利益や損失が表示されます。損益計算書も仕訳を行なった結果が反映されます。売上金額から仕入れの金額や様々な経費を差し引いた利益(損失)がわかります。
どの会計ソフトを使ったら良いか
今や大企業でも個人であっても会計処理をするためには会計ソフトを使います。パソコンが普及する以前はすべて手書きで行なっていたそうですが(私もその当時のことは知りません)、会計ソフトを利用すれば、仕訳を入力することによって貸借対照表や損益計算書を自動で作ってくれます。
ただ会計ソフトもいろいろな種類が出回っていて、どれを選んだらいいのかよくわかりません。どのような種類があるのかを紹介していきます。
クラウド型とインストール型
クラウド型はパソコンに会計ソフトをインストールする手間が無く、インターネット上に構築されたサービスを利用する方法です。
どのパソコンでも使えるので自宅で行なうほか、会社のパソコンを使って処理することもできます。インストールする必要が無いのでパソコンのハードディスクをほとんど消費しませんが、常にネットワークにつなげておく必要があります。
一方、インストール型は日常使用するパソコンにインストールして使うことになります。普段はインターネットに接続しないので通信速度等の影響は受けません。パソコンのハードディスクを消費するのでインストール前に空き容量を確認する必要があります。
有料ソフトと無料ソフト
会計ソフトには有料ソフトと無料ソフトがあります。有料ソフトの方が使い勝手が良いところがありますが、仕訳を入力して貸借対照表や損益計算書を作成するといった一般的な操作に関しては無料ソフトでも問題ありません。
副業で使用するのであれば無料ソフトで十分に対応できます。
主な会計ソフト
freee
ネットで会計ソフトを検索すると上位に表示される人気があるクラウド型ソフトです。無料プランと有料プランがありますが、無料プランは入力した取引を管理できるのは直近の30日間のみとなっており、操作方法等を実感するためのお試し期間といった位置づけです。
弥生会計
有名で実績のある会計ソフトです。以前会計事務所に勤務していたときに使用したことがあり、使いやすいソフトです。
確定申告が白色であれば、クラウド型の『やよいの白色申告オンライン』はずっと無料で使用できます。『やよいの青色申告オンライン』は1年間のみ無料で試すことができます。
フリーウェイ経理Lite
インストール型の会計ソフトでずっと無料で使用できます。私は1年以上このソフトを使用しており、特に不具合もなく、確定申告まで行っています。
会計ソフトの選択
会計ソフトにはさまざまなタイプのものがありますが、仕訳を入力して貸借対照表と損益計算書を作ってくれるという基本的な部分はどの会計ソフトも同じです。自分のスタイルに合ったものを選びましょう。
副業で確定申告を行なうために利用するのであれば、無料ソフトで問題なく行えます。副業を始めたばかりの時は資金面でも厳しいので、節約できるところは節約し、無料ソフトを利用することをおすすめします。
まとめ
確定申告や会計処理といった言葉を聞くと拒絶反応を示す方もいらっしゃいますが、会計についてわかってしまえば難しくはありません。経営状態もわかって、悪い状況でもすぐに手を打てるので、身につけておいた方が後々役に立ちます。
今後、会計についてや会計ソフトの使い方等を初めての方向けにわかりやすい記事を書いていきます。